ドッグランの入口で、よその子がぱっと駆け寄ってくる。「ねえ、さわっていい?」。うちの子は得意げに「いいよ!」と言いそうになり、足元の愛犬は知らない手にちょっと身を固くする。おでかけ先で、この場面を何度くぐったか分かりません。
子どもも愛犬も、どっちも大事。だからこそ、両者のあいだに「ちょうどいい距離」をあらかじめ引いておくのが、連れて行く側の仕事だと思っています。今日は、自分の子と愛犬、それからよその家族の子や犬と、現場で気持ちよく過ごすための距離の取り方を書きます。
まず決めておく、「リードは誰が持つか」
出かける前に、家で一つだけ決めておきたいのが、リードを握る役割です。
子どもにリードを持たせるのは、本人にとって誇らしい時間。でも、急に走り出した愛犬を、小さな腕で止めるのはやっぱり難しい。だから線引きはシンプルにします。広くて安全な芝生では子どもに短く持たせてみる、人や車道や他の犬とすれ違うときは大人が代わる。「ここは離していい、ここはダメ」を、その都度ことばにして渡す。
役割を一度渡したら渡しっぱなし、にはしないこと。場面で持ち手を切り替える。これだけで、ヒヤッとする瞬間がはっきり減ります。
「さわっていい?」に、即答で「いいよ」と言わない
おでかけ先では、愛犬を見つけた子が寄ってくることがしょっちゅうあります。ここでの返し方を親子で決めておくと、慌てずにすむ。
大事なのは、反射的に「いいよ」と言わないこと。まず愛犬の様子を見て、落ち着いているかを確かめる。そのうえで、相手の子に伝えたいのはこんなこと。
- 正面からじゃなくて、横からそっとね
- グーにした手を、鼻先に近づけてから
- 頭の上から、いきなりなでない
愛犬が後ずさる、あくびを繰り返す、目をそらす——こういうサインが出ていたら、無理にさわらせない。「今日はちょっと恥ずかしいみたいで、ごめんね」と、やんわり断ることばを用意しておくと、相手の子も傷つかずにすみます。国営昭和記念公園ドッグランみたいな広い場所でも、入口やベンチのまわりは人と犬がぐっと近づくポイント。落ち着ける隅を一つ、拠点に決めておくと気が楽です。
「興奮が重なる瞬間」を、先に読む
子どもも犬も、楽しい場所では気持ちが高ぶる。その高ぶりが重なった瞬間が、いちばん危ない。子どもが歓声をあげて走り出すと、つられて愛犬も興奮する。他の犬が走り回るドッグランなら、なおさらです。
だから、先回りでこう置いておきます。着いてすぐの15分くらいは、子も犬も気持ちが高いので、まず落ち着く時間を取る。子どもが走り回る輪と、愛犬の居場所を少し離す。そして「走っていい合図」を家族で決めて、勝手に駆け出さないようにしておく。そうか公園 ドッグラン広場のように区画が分かれている場所なら、犬のサイズや混み具合を見て、空いている区画や時間を選ぶのも手です。
子どもを「お世話する側」に回す
距離感って、禁止だけでは身につかないんですよね。「走らないで」「近づきすぎないで」を連発するより、子ども自身を世話する側に回したほうが早い。
水をあげる係、おやつをあげる係、足を拭く係。小さな役割を一つ渡すだけで、子どもは「自分が守る側だ」と感じはじめる。走って驚かせることも、自然と減っていく。できたら、その場で「助かったよ」と声に出す。それと、愛犬の「いやがるサイン」を子どもにも教えておくと、親が見ていない場面でも踏みとどまってくれます。
距離を引くことが、いちばんの思いやり
くっつけることだけが、仲良しの形じゃない。お互いが心地よくいられる距離を引いてあげるのが、子どもにも愛犬にも、いちばんの思いやりだと思います。
不安な様子が続くときや、咬みつき・体調の心配があるときは、素人で抱え込まず、かかりつけの獣医やしつけの専門家に相談を。今日の距離が守れたら、それでもう十分いい一日。並んで眠る二人の寝顔が、その答えです。